水イボ(伝染性軟属腫)とは

「水イボ」は正式には伝染性軟属腫ウイルスによる皮膚感染症です。主に幼児から学童期の子どもに多く見られます。皮膚にできる水イボは、光沢のある肌色〜白っぽい円形の盛り上がりが特徴で、大きさは通常2〜5mm程度です。水イボは治療しなくても半年〜2年ほどで自然に消失するケースもあります。そのため、状態によっては経過観察とすることもあります。
ただし、特に小さな子どもは無意識に引っ掻いてしまい、水イボを自ら広げてしまうことが多く、その結果、感染が広がる原因となります。そのため、数が少ないうちに摘除することが基本的な治療方針です。
摘出は痛みを伴う処置であるため、事前に局所麻酔のテープやクリームを用いて痛みを軽減してから行います。

水イボの感染経路

水イボは皮膚同士の直接接触によって感染します。特にプールでの感染が多く見られ、ビート板や浮き具、タオルなど共用する物品を介してうつることもあります。ただし、水着などで覆われた部位の水イボは感染源になりにくいため、水イボがあるからといって必ずしもプールを休む必要はありません。

また、成人の場合は性交渉によって感染することもあります。特にHIV感染者など免疫が低下している方では、水イボが悪化しやすいため注意が必要です。

水イボの治療方法

当院では、患者様の年齢や症状の程度に応じて、ピンセットによる物理的な除去と、専用クリームによる外用治療を中心に水イボの治療を行っています。
水イボは自然に消えることもありますが、放置すると掻き壊しによる感染拡大や悪化を招く恐れがあります。「痛みがかわいそうだから」と何もしないままにしておくと、全身に水イボが広がってしまい、かえって治療が大がかりになるケースも見受けられます。
そのため、早い段階での治療介入とスキンケアの徹底が非常に重要といえます。

ピンセットによる摘除

専用のピンセットを使って、水イボのみを選択的に取り除く方法です。
処置の際には、水イボを引っ張って皮膚を引き延ばすような力を加えると強い痛みが出やすいため、皮膚に軽いテンションをかけながら、水イボの内容物のみを圧出するように行います。

多くのお子様では、アトピー性皮膚炎や乾燥肌など、皮膚バリアが弱くなっている背景があります。これらの疾患に対しても並行して治療を行うことで、感染の拡大予防と治癒の促進に繋がります。また、自然治癒の過程で「モルスカム反応」と呼ばれるかゆみや赤みを伴う炎症反応が見られることがあります。この段階で掻き壊してしまうと悪化に繋がるため、スキンケアや生活指導を中心としたケアが重要です。

ただし、モルスカム反応を起こし自然消退が見込まれる場合は、摘除を行わず経過を観察することもあります。
なお、一度除去しても潜在していたウイルスが後から現れることがあるため、施術後は約2週間後の再診を行っています。

水イボクリームによる外用療法

当院では、痛みを伴わない治療の選択肢として、水イボ専用の外用クリーム(3A M-BF CREAM)の処方も行っています。このクリームは、殺菌力の高い銀イオンと、高い保湿性と抗炎症作用が報告されている天然成分「サクラン」を主成分としており、抗ウイルス作用を目的に開発された世界初の機能性保湿クリームです。

使用方法としては、朝と入浴後の1日2回が基本で、水イボそのものだけでなく、その周囲の皮膚にもやや広めに塗布することで効果が高まります。治療の経過としては、塗布開始から早ければ2週間、通常は2ヶ月ほどで、塗った部分が赤く変化し始めます。これはお薬が効き始めたサインであり、そこからさらに1ヶ月ほどかけて水イボが徐々に目立たなくなっていきます。

ごく稀に接触性皮膚炎(かぶれ)といった副作用が起こることがありますが、施術に伴う痛みがないため、痛みが苦手なお子様や、時間をかけて穏やかに治療を進めたい方に適しています。

その他の治療

その他の治療法としては、グルタルアルデヒドを塗布して乾燥させる方法や、SADBEを塗布してウイルスに人工的に感作させ、免疫反応を促して病変の消退を早める方法があります。さらに、硝酸銀ペースト、モノクロル酢酸、ポドフィリンなどを用いた外用療法や、他のイボ治療と同様に液体窒素で患部を凍結させる方法も行われます。