形成外科とはどのような診療科か

形成外科と聞いても、あまりピンとこない方が多いかもしれません。整形外科や美容整形外科と混同されがちですが、それぞれ診療の内容はまったく異なります。英語では形成外科を「Plastic Surgery(プラスチック・サージャリー)」と呼びますが、ここでいう「プラスチック」とは、ビニールなどの素材を指すものではありません。語源はギリシャ語の「plastikos(造る・形づくる)」であり、失われた組織や形を再構築するという形成外科の本質を表しています。
つまり、形成外科は主に皮膚や体表を対象に、怪我や火傷、先天異常などで損なわれた状態をできるだけ自然な形に戻すことを目的とした専門領域です。

形成外科には様々な分野が含まれており、美容外科はもちろん、手術後の欠損部位を再建する再建外科、先天的な異常に対応する先天奇形外科、さらに褥瘡や糖尿病による足潰瘍など治りにくい傷を専門に扱う創傷外科もその一部です。全ての領域を1人の医師が網羅するのは困難ですが、他施設と連携することで、必要な治療を適切に提供することが可能です。

また、形成外科では医療の現場では見落とされがちな、日常的な身体のトラブルにも対応しています。例えば、巻き爪や陥入爪、ホクロや皮膚の腫瘤、魚の目・たこ、瞼の下垂による目の開けづらさ、軽度のやけどや擦り傷、介護中に起こる床ずれやおむつかぶれといった身近な症状でも、専門的な治療が可能です。こうした診療に対応できる医療機関は、意外と多くはありません。

当院では、皮膚外科領域の日帰り手術を中心に診療を行っており、特にホクロや粉瘤、脂肪腫、首周りのイボの切除、眼瞼下垂の手術、わきがや陥没乳頭の治療などを保険適用で実施しています。

さらに、ピアスによる耳裂け(耳垂裂)の修復や、手術跡の修正、皮膚のひきつれ改善、ケロイドの治療などにも幅広く対応しています。

皮膚科と形成外科の違いとは?

皮膚科は、湿疹やかぶれ、アトピー性皮膚炎といった皮膚の炎症性疾患を中心に、内服薬や外用薬を用いた薬物療法で症状の改善を目指す診療科です。一方、形成外科は、お薬だけでは改善が難しい皮膚の腫瘍や感染症、外傷、そして見た目や機能に支障をきたす皮膚の異常などを、手術を中心としたアプローチで治療していく専門領域です。

形成外科の医師は、皮膚の構造や解剖学的知識、傷跡をできるだけ目立たなくする縫合技術(真皮縫合など)、手術後のケアまで、体表の治療に関する専門的なトレーニングを受けています。そのため、皮膚の表面に関わる外科的処置を専門とする医師と捉えて頂くと分かりやすいでしょう。

当院では、形成外科認定医である院長が皮膚科の診療も行っており、皮膚疾患についてもご相談頂けます。

形成外科の受診を検討したい症状

・皮膚にしこりや腫れなどの「できもの」がある
・顔に傷や打撲などの外傷を負った
・怪我をして出血が止まらない
・瞼が重く、目が開けづらい
・脇のにおいが強く、日常生活に支障を感じている
・傷跡が引きつれたり、盛り上がったりして気になる など

形成外科で対応する主な疾患

眼瞼下垂

瞼が垂れ下がることで目が開けにくくなる状態で、視野が狭くなるほか、おでこにシワが寄ったり、頭痛の原因になることもあります。原因としては、加齢に加え、ハードコンタクトの長期使用、アレルギーや炎症による瞼の摩擦などが挙げられます。また、皮膚のたるみによって視界を遮るケースもあります。
治療方法は症状や原因によって異なり、たるみが主な場合は皮膚を切除、筋肉や腱膜の異常がある場合には内部の組織を修復します。まずは外来での診察にて、最適な治療法をご提案いたします。

耳介変形 【保険適用】

耳介変形には、埋没耳・コップ耳・立ち耳・袋耳・折れ耳・スタール耳などがあります。マスクや眼鏡がかけにくいなど日常生活に支障がある場合には、保険適用による手術で治療することが可能です。耳介軟骨や筋肉の付着などを原因にしたさまざまな形態の変形がありますが、ほとんどの場合は局所麻酔による日帰り手術で治すことができます。当院では、日本形成外科学会認定医が丁寧なカウンセリングと繊細な手術を行っていますので、些細なことでもご相談ください。

ケロイド・傷跡

ケガや手術跡が残っている状態が肥厚性瘢痕で、元の傷跡よりも大きくなってしまった状態がケロイドです。外用薬や内服薬による治療が一般的ですが、周囲の筋肉や腱が癒着している場合などでは手術が必要です。特に肥厚性瘢痕の場合には機能不全がないケースでも形成外科の繊細な切除縫合手術によって目立たない状態にできる場合もよくあります。また時間が経過した傷跡には、レーザー治療が効果的なケースもあります。当院では、経験豊富な日本形成外科学会認定医が状態を見極めて、最適な治療を行っています。

巻き爪、陥入爪 【保険適用】

巻き爪は爪の左右が皮膚に深く食い込んでいる状態で、陥入爪は爪の左右の皮膚が炎症・化膿している状態です。サイズの合わない靴や深爪、爪水虫で巻き爪や陥入爪を発症することが多く、陥入爪では歩行困難になって早急な治療が必要になることもあります。爪水虫が原因の場合は、ほとんどが内服で改善できます。軽度の場合はテープ法、中等度ではワイヤー矯正、重度の場合は手術が必要です。食い込んだ爪を除去して皮膚に食い込む原因になる爪母をフェノール薬でなくすフェノール法、爪母や側爪郭を直接切除する手術などから状態に合わせた治療法を選択します。

腋臭症

粉瘤・脂肪腫

粉瘤は、皮膚の下に角質(あか)が溜まることでできる良性腫瘍で、独特なにおいを伴うことがあります。放置すると細菌感染を起こし、腫れて膿が溜まることもあります。感染した場合は、膿を排出してからの治療が必要になります。
感染のないうちに、早めに摘出することが理想です。当院では、顔など目立つ部位には「くり抜き法」も取り入れ、傷跡に配慮した日帰り手術を行っています。

植皮術【保険適用】

やけど、手術、外傷などの皮膚欠損に、他部位から皮膚を移植

陥没乳頭【保険適用】

乳頭が皮膚の中に引き込まれた状態で、見た目の問題に加え、授乳に支障をきたすこともあります。原因は、乳管の周囲に存在する瘢痕組織が乳頭を内側に引っ張ってしまうためと考えられています。治療ではこの瘢痕を除去して乳頭を整える必要がありますが、再発を防ぐためにも乳管をできる限り温存しながら手術を行っています。日帰りでの手術が可能です。

でべそ

ホクロ

ホクロは、メラニンを作る母斑細胞が増殖してできた良性の腫瘍です。生まれつきのものもあれば、年齢を重ねてから現れることもあります。時間の経過とともに大きくなる場合があり、なかには悪性の可能性を否定できないものも存在します。
特に、急にサイズが大きくなったり、出血・かさぶたが繰り返される場合は注意が必要です。確定診断には、切除後の病理検査が必要です。当院では、顔など目立ちやすい部位も含め、丁寧な日帰り手術と適切なアフターケアを行っています。