
眼瞼下垂症は、どなたでも発症するリスクがある病気ですが、瞼のたるみとの違いが分からない方も多いかもしれません。
本ページでは、次の内容について詳しくご説明いたします。
- 眼瞼下垂とは
- 瞼のたるみと眼瞼下垂の違い
- 眼瞼下垂症のセルフチェック方法
- 手術の適応基準
- 保険適用基準
眼瞼下垂とは
眼瞼下垂は、上瞼がうまく上がらず、垂れ下がることで視界に支障をきたす状態です。この症状が進行すると、無意識に目を強く開こうとしてしまい、その結果、目の周りの筋肉に負担がかかり、眼精疲労や頭痛を引き起こすことがあります。また、瞼を上げようとする動作で眉毛を持ち上げるため、額に深いシワが刻まれ、表情が険しく見えることもあります。
初期段階では、鏡を見ても瞼の変化に気づきにくいため、本人が自覚することが難しいこともあります。しかし、三白眼や額のシワなどが兆候として現れることがあります。これらの症状を放置すると眼精疲労が悪化する恐れがあるため、少しでも気になる点があれば、早めに当院までご相談ください。
眼瞼下垂の症状
眼瞼下垂は、特に50代以降に多く見られる症状で、様々な不快な症状を引き起こします。以下の症状が気になる方は、眼瞼下垂の可能性を疑って、チェックしてみましょう。
- 瞼がずっしりと重く感じる
- 目を開けるために力を入れなければならない
- 上瞼が黒目の端にかかり、視界が遮られる
- 視界が狭くなり、物が見えにくくなる
- 頭痛や肩こり、目の疲れなどが頻繁に起こる
また、次のような外見的な変化が現れることがあります。
- 「睨んでいる」と言われることが増えた
- 写真を撮ると「眠そうな表情だ」と指摘される
- 瞼がたるんで、年齢以上に老けて見える
- 眉間のシワが深くなり、目立つようになる
- 何かものを見るとき、眉毛や顎を上げる癖がついた
眼瞼下垂を放置すると、視野が狭くなるだけでなく、頭痛や肩こり、眼精疲労なども引き起こし、普段の生活に影響が出ることがあります。心当たりのある方は、早めに眼科を受診して適切な治療を受けましょう。
眼瞼下垂の重症度
眼瞼下垂は、進行度により、軽度、中等度、重度の3段階に分けられます。それぞれの状態を確認してみましょう。
正常な状態
瞼が十分に開き、白目がしっかりと見えている状態です。
軽度の眼瞼下垂
瞼が黒目にはかかるものの瞳孔にはかかっていない状態です。
中等度の眼瞼下垂
瞼が瞳孔の上縁に部分的に覆いかぶさっている状態です。
重度の眼瞼下垂
瞼によっては、瞳孔の半分以上が隠れている状態です。
セルフチェックの方法
眼瞼下垂の疑いがあるか簡単に確認できるセルフチェックがあります。
- 目を軽く閉じ、顔を正面に向けてください。
- 次に、眉毛の上に指をそっと置いてください。
- その状態のまま、目を開けてみましょう。
- もし額に力が入ったり、目を開けるのが難しい場合は、注意が必要です。
指で押さえた状態でも目がスムーズに開けるなら、眼瞼下垂の心配は少ないでしょう。しかし、額に力が入ったり、指で押さえたままだと目を開けるのが難しいという場合、眼瞼下垂が疑われます。
瞼のたるみと眼瞼下垂の違い
年齢を重ねると、瞼が重く感じたり、視界が狭くなったりすることがあります。この原因には「瞼のたるみ」と「眼瞼下垂」の2つが考えられますが、それぞれ異なる要因によって引き起こされます。
瞼のたるみは、加齢によって皮膚の弾力が失われ、瞼が垂れ下がる状態を指します。この症状は「眼瞼皮膚弛緩症(がんけんひふちかんしょう)」とも呼ばれ、皮膚のゆるみが主な特徴です。
一方、眼瞼下垂は、瞼を持ち上げる筋肉の働きが低下し、瞼が十分に開かなくなる状態を指します。この症状には2つのタイプがあり、先天的に瞼を持ち上げる力が弱い「先天性眼瞼下垂」と、加齢やその他の要因で少しずつ、または突然瞼が下がる「後天性眼瞼下垂」があります。
瞼のたるみと眼瞼下垂の見分け方
瞼のたるみ(眼瞼皮膚弛緩症)と眼瞼下垂は症状が似ていますが、瞼の下がり方に違いがあります。
瞼のたるみは、余分な皮膚が垂れ下がることで瞼の縁が覆われますが、縁自体の位置は変わりません。指や細い棒で皮膚を持ち上げた際、視界が広がるようであれば、瞼のたるみが原因と考えられます。
一方、眼瞼下垂は、瞼の縁そのものが下がっている状態です。皮膚を持ち上げても視界の広がりがほとんど変わらない場合は、眼瞼下垂の可能性が高いでしょう。
眼瞼下垂症の診断・判断基準
眼瞼下垂の診断には、いくつかの検査が用いられます。主に「瞼縁角膜反射距離(MRD)」「瞼裂高」「挙筋機能検査(levator function)」の3つの指標をもとに評価されます。
ただし、眼瞼下垂症には明確な定められた診断基準は存在せず、以下の基準は一般的な目安とされています。
MRD-1
MRDは、瞼の開き具合を測るための指標です。MRDは2つの測定値に分けられます。
- MRD-1: 瞳孔中央から上眼瞼縁までの距離
- MRD-2: 瞳孔中央から下眼瞼縁までの距離
特に、MRD-1は眼瞼下垂の重症度を評価する際によく用いられます。
一般的な基準は以下の通りです。
- 正常:2.7~5.5mm
- 軽度の眼瞼下垂:約1.5~2.7mm
- 中等度の眼瞼下垂:約-0.5~1.5mm
- 重度の眼瞼下垂:-0.5mm以下
※MRD-2を計測することで、上下左右の眼瞼の相対的位置関係を判定可能です。
瞼裂高
瞼裂高とは、角膜(黒目)の最下端から上瞼の縁までの距離を測定する指標です。この数値によって、瞼の下がり具合を評価します。
一般的な基準は以下の通りです。
- 正常:約10mm以上
- 軽度~中等度の眼瞼下垂:約6~9mm
- 重度の眼瞼下垂:5mm以下
挙筋機能検査
瞼を持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋)の働きを調べる検査です。以下の流れで測定し、機能の低下度を判断します。
- 額の筋肉の影響を防ぐため、親指で眉毛の上を押さえる。
- 目線を最大限下に向けた状態から、できるだけ上へ視線を移動させる。
- この移動距離を測定し、眼瞼挙筋の機能を評価する。
一般的な基準は以下の通りです。
- 正常:8mm以上
- 軽度~中等度の眼瞼下垂:4~7mm
- 重度の眼瞼下垂:3mm以下
※腱膜性眼瞼下垂では、腱膜の付着部がわずかにずれるだけで、上眼瞼挙筋の機能には影響はありません。
※上眼瞼挙筋の機能が低下している場合、筋肉自体か、それを制御する神経に異常がある可能性があります。
※突然、上瞼が下がる症状が現れた場合、脳梗塞や脳動脈瘤、糖尿病に起因する動眼神経麻痺の疑いがあります。このような場合、CTやMRI検査、さらには血液検査を受けることが推奨されます。
※朝は問題なく目が開くが、夕方になると開きにくくなる場合、重症筋無力症の疑いがあるため、血液検査を行うことが重要です。
瞼のたるみと眼瞼下垂が同時に見られることも
瞼のたるみと眼瞼下垂が同時に見られることもあります。
前述のように、両者の主な原因は加齢です。特に高齢者においては、瞼が下がる原因として、たるみと眼瞼下垂が重なることがよくあります。
このような場合、改善にはまず余分な皮膚を取り除き、その後に眼瞼下垂手術を行います。
眼瞼下垂手術の適応基準
眼瞼下垂を含む眼瞼疾患は、一般的に緊急性が高い病気ではないため、直ちに治療が必要とされることは少ないです。
そのため、当院では眼瞼下垂でご相談頂いた際、「眼瞼下垂手術の適応があります」とお伝えしていますが、「手術を受けた方が良い」とは申し上げていません。
眼瞼下垂手術の適応は、患者様の眼瞼下垂の進行状況や自覚症状、さらに挙筋機能や眼瞼の状態を総合的に考慮したうえで、手術のメリットがリスクを上回ると判断できた場合に決定されます。
眼瞼下垂手術の判断基準
「眼瞼下垂がどの程度進行すると手術が必要ですか?」という質問をよくいただきます。
当院では、軽度の眼瞼下垂であっても、その症状が日常生活に影響を及ぼしており、手術による改善が期待できる場合は手術適応としています。ただし、眼瞼下垂手術は最終的な選択肢であり、術前に十分な診察と手術内容の説明を行い、手術のメリットだけでなくリスクも理解した上で選択することが重要だと考えています。
眼瞼下垂症の保険適用の基準
眼瞼下垂手術が保険適用となる主な基準は、次のとおりです。
- 重度の眼瞼下垂症と診断されている
- 見た目を目的とした手術ではなく、病気や外傷の治療を目的としている
- 国が認めた治療法、または厚生労働省が承認した薬剤を用いた治療である
眼瞼下垂の手術に保険が適用されない場合
眼瞼下垂手術の質は、保険診療でも自費診療でも大きな差はありません。しかし、以下のようなケースでは、当院では自費での手術をご案内することになります。
眼瞼下垂の診断を受けていない場合
眼瞼下垂と診断されなかった場合、保険での手術は受けられません。ただし、目の開き具合に不満があり、より大きな目を求める方は、自費診療を選択できます。
美容が主目的の場合
例えば、目を開けたときの二重幅に特にこだわりがある方などが当てはまります。
眼瞼下垂手術で二重の幅を調整するには、多くの要素が影響し合って決まるため、理想通りに完全にコントロールするのは難しいというのが現実です。
保険診療での眼瞼下垂手術は、主に機能改善を目的としており、外見を希望通りに整えることが第一の目的ではありません。
もし、見た目の調整が比較的簡単にできる場合には、ご要望に沿うことが可能ですが、その際には手術自体に伴うリスクも考慮しなければなりません。
例えば、広い二重幅を望まれる場合、開瞼不良や瞼がたるんで不自然に見える「ハム目」になる可能性もあります。
保険適用で眼瞼下垂手術を行う場合、最も重要なのは機能面の改善と自然な見た目の調和であり、完全に審美的な要望に応えることは難しいことがあります。
※当院での保険適用の有無は診断後に決定いたします。症状がない場合には自費診療となります。また、難易度の高い症例については、近隣の大学病院をご紹介することもございます。
